自己紹介

ヒト科/ほのぼのまったり属/何とか生きてる類/読書/絵/写真/詩やミニ小説/フォロワ数ふえたけど~気楽にやって自然に繋がってるだけだよ~趣味のあう方は気楽にどうぞ~読書!絵!写真!詩!フォロー歓迎!フォロバしま~す <※ 画像等は 自作発言や二次配布すべからず ※個人使用なら、常識範囲内で使用自由、保存もOK>

もっと自己紹介

イワデス国のお話をここに上げていこうかと思います。
けっこう長い文章を書き込めるのね~ここ



イワデス国の物語 第二話

神隠しエピソード


前編
*****************************************



「子供が神隠しに?」「え?神域で?」
行方不明といえば通常は番所の役人が対処するが、神域の事ゆえ王宮に連絡が入った。
国王は国務で超忙しいこともあり、王子達に任せてみることにした。
イワデス国の王子二人、兄のケンドリックと弟のウォンローは聞いて首をかしげる。
「神域は神殿に仕える者と、王家の血筋の者しか入れないはずですよね。」
「それ以外は神牙獣に追い払われてしまうのに、そもそもなんで子供が入れたんだろう?」
国王は、刹那、ちょっと遠いような不思議な表情をして答える。
「おそらく風のような子だったんだろう。」

イワデス国の北の地にそびえる霊峰イワデンデ。そこを中心に山のすそ野の一定の地域までが、神域であり国の定めた自然保護区でもある。
山へ向かう道の途中、王子達は神域との境界とおぼしきあたりで、女性が神牙獣に遮られて立ち往生しているのを見つけた。
「又三郎、又三郎」と神域に向かって叫んでいる。ずっと叫び続けていたのだろう。声はかすれて疲れた顔をしている。かたわらにはもう一人、番所の役人らしき人物が所在なく佇んでいる。
「行方不明のお子さんのお母さんですね」
声をかけたのは王子二人ではなく、同行してきたもう一人の人物。かなり高齢の女性。しかし足取りもしっかりしていて瞳は若々しい。
「国王の命により参上しました。神域は神に仕える者か王家の血筋の者しか入れないことはご存知ですね。私どもに任せて自宅で連絡をお待ち下さい。」
母親はハッとして王子達を見る。
「な、なんとまさか王子様二人が助けに来てくださるなんて…あのでもあなたは?」
「こう見えて王族ですよ。国王の大叔母のリンデリッカーナでございます。ケンちゃんもウォンちゃんも優秀ですがあくまで未成年ゆえ、大人の同行者が必要と国王に頼まれましてね。」
王子達は心密かに(ケンちゃんはやめて)(ウォンちゃんはやめて)と胸につぶやく。
さて、母親の説明では子供は狐を追いかけ、神域の境をこえて行ったということだ。なぜか神牙獣に止められることもなく。
そして神域の手前で止められた彼女から、さほど離れてもいないほんの目の前で、忽然と消えたのだという。
大叔母様は、ふーむと頷いて考え、考え、また頷いて口を開く。
「やはり、お母様はここにいるより、家に戻って待機いただくほうがいいでしょう。神隠しにあって戻って来れた場合、気がつくと自宅の前に立っていて何があったか覚えてない、というケースが少なくないんですよ。」
そして役人からも「家で待機しましょう。少し休んだほうがいいですし」となだめられ、母親は振り返り振り返りしながらも場を立ち去った。

王家の3人は神域に踏み込んだ。
血筋ゆえ、神牙獣に止められることもない。
「兄上この神牙獣は緑色だね」
「うん。神牙獣は自然の力が具現化したものだから、これの場合、草地の色なんだろうね。」
微動だにせず佇むそれを横に見ながら、草の匂いと頬を撫でるような微風の中、歩みを進める。
大叔母様はなんだか張り切って先頭立って進んでゆく。
「ケンケンちゃーん、ウォンウォンちゃーん」パタパタ手招きして二人を呼ぶ「ほらこの辺だわね又三郎ちゃんが消えたっていうの」
「そうですね叔母様」「とくに変わった様子もないですね叔母様」
ほんとは彼らから見ると、大おばあ様か、ひい大叔母様というのが正確だろうが、まあ空気というかなんとなく叔母様とよぶ。
あたりを見回してみるが周囲一帯、膝がかくれる程度の緑波打つ草原が続いている。ここが他と違う特別なところには見えない。
…が
「はて?」
ケン王子が腰の剣をスラッと抜いて身構えた。
「どうしたの兄上。」
「わからない。わからないんだが、何か妙な感覚が…」
大叔母様もつられてか腰の大剣をゾロリと抜いて(なんでこんなお年寄りがそんなんを帯剣してるのかはわからないが)ピタリと構える。
なんかつられて弟王子も剣を抜く。
3つの剣に囲まれた形となった空間がゆらっと揺らぐ。
銀色の狐が飛び出した。
神域の外へ、中へ、外へ、中へ、ジグザクに駆ける。もちろん出ようが入ろうが狐であるゆえ、神牙獣は反応しない。
飛ぶように駆ける野生の狐のスピードに人間が追いつくのはまずムリである。
普通だったら。
だがこの王子二人は飛び抜けた運動能力の持ち主で、人間としてはスゲー俊足だった。
協力し合ってうまく狐の行く手を塞ぎながら追い詰めてゆく。
が、狐の方もうまく逃げ回ってのがれ、木立に飛び込んだ。逃げられたか!
と、思った刹那、大叔母様が木立の中から飛び出して行く手を塞ぎ捕まえた。
どうやら全体を見て狐の動きを予測して待ち伏せたらしい。
「スゲーおばさま」「さすが年の功」
「バカお言いでないよ。私はまだまだ若いんだからね。あなた達とたいして違わないでしょう。」
ステキなセリフをさらりと言い放たれて、王子二人は3秒ほど時間が停止した。
時間が再び動き出すと3人は顔を見合わせる。ケン王子はちょっと首を傾げる。あのへんな感じはたぶんこの狐に間近でじっと見られていたからだろう。剣を3つ突きつけられたことで魔法?だか幻術?で、見えないようにしていたのが解けたといったところか。
しかし思わず追いかけて捕まえたものの、この狐がこの件に関係してるかどうかわからないし、関係者(?)だったとしても尋問するわけにも…
キャンッケンケンケンッキャウキャウキャウ
また別に2匹、風のように、銀色の狐があらわれ飛びかかってきた。様子からして捕まえた狐を助けようとしてるらしい。
「いやちょっと待って、あわあわ」
「どうしようどうしよう」
さらにもう一匹、また風のようにあらわれ、飛びかかってくる。
「ケンケンちゃんをいじめるなっ離せ離せ」
人語を話す妖狐かっ
ケンケンちゃんって?つかまえた狐ってオレの名前といっしょかよ(それで見てた?)って、ん?あれ??
いや「一匹」じゃない加わったのは人間だ、銀色の髪の10歳くらいの男の子だった。
一瞬見て狐かと思ったというのも、髪だけじゃなく白いふさふさした服を着ていて、腰にふさふさの尻尾みたいなアクセサリー(?)までつけているのだ。
狐が好きなのか、狐を追いかけて…
もしや…
「又三郎くん?」とケンドリックが声をかけると少年は、目を見開いてこちらを見た。
おずおずと頷いたのを見て、大叔母様は腕の中の狐を離した「子供が見つかったのなら手がかりとして捕まえておく必要ないね」
ケン王子は、子供の手をしっかりと握りしめる。
事情はあとで聞くとして、早く母親のもとへ連れて帰ろう、と、ほっとしたのもつかの間だった。
3匹の銀狐が3方に散ってこちらを睨みつける。ふっと銀の毛並が刃のように煌めいたかと見るや、3匹を繋いで地面にうっすら輝く謎の紋様が浮かんで、消える。空間がゆらっと揺らぐ。
3匹の狐は銀色の髪の2人の少年と1人の少女になっていた。
周囲の空気の濃さが変化したように感じる。空の色が深い、雲が低い。
風がゆする草木の音が、ただのざわめきではなく、人語の囁きのように感じられる。
大叔母様が「おや別世界へ招待されちゃったようだよ。」と呟く。
え?どういうこと?王子二人は怪訝な顔をする。
三匹の狐だった子供たちが、声を上げ…
いや、気がつくと、周囲にはもっと多くの人影があり…髪の色はきつね色、濃いきつね色、薄いきつね色、銀色…多分人間ではない…こちらを睨みつけ一斉に声を上げる「又三郎ちゃんを離せ」「又三郎ちゃんを離せ」「又三郎ちゃんを離せ」「又三郎ちゃんを離せ」「又三郎ちゃんを離せ」「やい人間、又三郎ちゃんを離せ」
「やい人間」「やい人間」「離せ」「離せ」「離せ」「食べる気か」「皮を剥ぐ気か」「やい人間」「その子を離せ」
え?又三郎くん狐たちに狐あつかいされてるんだけど?
狐たちはいっせいに飛びかかってきた。手に手に石やら棒やら茶碗やら壺やらヤカンやら持って、投げつけてくる。叩くやら蹴るやら髪や服を引っ張るやら。
王子二人は「やばい」と、目を見合わせる。神域すなわち保護区の生き物は保護対象だ、傷付けてはいけない。ソフトに戦わなくては。
しかし彼らは容赦なく襲ってくる。
殺傷能力の低い武器ばかりだし、王子二人の武道スキルは達人級で、大叔母様もこの年齢で信じられないほど出来る。
が、相手の数が多すぎて、分が悪い。剣の鞘と柄で防いだり叩き返したり、体術でかわしたりしながら、さらにケンドリックは又三郎君の手を離すわけにもいかない。何しろ風のような子なのだ。一瞬でも離したらどこかへ飛んで行ってしまいそうだった。
一方的に攻撃されっぱの防戦し続けで、ボロボロになったころ、唐突に味方があらわれた。
キラピカシュバババヒュンパアンヒュウン
「王子様ああああっお助けしますううううう」
神仕えの姿の美少女だった。
「神域の中のことゆえ零波鏡で把握しておりましたがあああああちょっと手が離せなくてええええ」
神牙獣の事件のときに気まずい出会いをした、巫女のメイメイだ。
素早く手を動かして印を組み、光の泡をその手から生み出しては次々と狐を包んで捕らえてゆく。これなら身動きできなくさせるが傷つけることはない。あっというまに狐たちの動きを封じてくれた。そして
「お鍋を火にかけてるので戻りますううううう」
と、去って行った。
「ななな、巫女どのありありありが…」
「驚く間もお礼を言う間もなく行っちゃった」
王子二人とそして大叔母様もポカーン
ケン王子は気を取り直して、手を握りしめていた少年にやっと伝えることができた。
「私達は又三郎くんのお母さんに頼まれて探しに来たんだよ。怪しい者じゃないよ」
「え?お母さ…?」
こたえる少年が言い終わる前に、銀色の大きな狐が風のようにあらわれた。空間がゆらいで銀色の髪の女性の姿に変化する。
「この子はもうウチの子だよ。」
「あ、お母さん」
「え」「え」「え」
銀狐の女性が髪をかきあげる。銀色の流線の煌めきがふわさっと広がる。彼女はふんっと鼻を鳴らして言い放つ。
「こんな可愛い子を捨てたやつのところに戻ることはないよ。」
「いやいやいや捨ててません。めちゃくちゃ心配してます。頼まれて探しに来ました。」
「…あれ?」
「え?」
「いやだって、そこいらで立ち止まって追いかけても来ないしわーわーすごい声で騒いでるから、追い払って見捨てたのかと。」
「あーえーとえーと」
人間は神域に入れないなんて狐にはわからないどころか、どうでもよすぎて、意識さえもしたことがないのだろう。
なるほどなるほど、神域の境界で立ち往生していた母親の行動は、この銀狐にはそう見えたのか。しかし何をどう説明したら理解してもらえるやら、王子二人と大叔母様は、眉を寄せてこめかみを押さえた。
さらに銀狐は続ける。
「可哀想に又三郎ちゃんは再婚したお父さんの連れ子だったんだって。だから黒い髪と目のお母さんには全然似てないの。」
そうだったのか似てないとは思ったけど、王子達もそれぞれ、兄は父に似てない、弟は母に似てないのでぜんぜん気にしなかった。
「きっと毎日、血の繋がらないお母さんに虐められて、だから体中に傷やアザが…」
えっと驚いた王子達だが、又三郎君本人がふるふる首を横にふって説明する。
「野山を走り回って遊ぶのが好きだから、自分で転んだり木にひっかけただけだってば。前もそう言ったでしょう。」
「ひどいお母さんなのに、こう言ってかばってあげるのよ。なんて優しいのでしょう。でも苦しんでるのはわかってるの。私がうんと可愛がって立派な狐に育ててあげるからね。」
「いやひどいお母さんじゃないよ」
「わかってるわかってる何も言わないで」
「それに僕は人間…」
「そんなこと言わないで、お母さん悲しくなるよ」
泣き出す銀狐
「わかったわかった僕は狐だよ」と折れる又三郎君
ケン王子は銀狐を説得しようと試みる。
又三郎君の人間のお母さんが彼を実の子と同じに愛して心配して待っていることや、神域という場には入れない事情など、がんばってがんばりまくって説明するも、銀狐は受け付けない。
(やっぱ理解できないのかなあ)
はたで聞いてる弟王子と大叔母様はヒソヒソ語り合う。
「こんなに言ってもわからないって、やっぱ人間と狐は価値観や常識がすごく違うんだね。」
「いやこれは人間も狐も男か女かさえも関係ない困った事態のようだよ。」
「どういうこと?」
「長く生きていろんなやつと関わっていってだんだんわかるんだけど、いるんだよああいうの。正しそうなこと言ってるけど、実は自分だけの正義をゴリ押ししたいだけの超自己中セーカク。」
「え…」
「言い負けそうになると、泣いたり怒ったり、わからないふりしたり、話の流れをムシして別件を持ち出したり、相手を黙らせるのが上手だろう。」
「…」
「でも決して当事者の気持ちを考えてない。又三郎君が幸せかどうかなんて気にしてない。『私の言ったとおりでしょう、私いい事してあげたでしょう』って顔したい欲がモリモリなのさ。ああいうのに捕まると精神も時間も蝕まれてしまうんだ。」
「あ、兄上が疲れ果ててる。」
「おや、でもさすがだねケンちゃん。がんばって理詰めで言い返して追い詰めてるよ。あ、まずいっ」
言い負かされそうになった銀狐がいきなり呪詛を唱えて真っ黒な大剣を手中に出現させ、ケンドリックに切りかかる。
ギギンッ
弟王子と大叔母様が素早く抜剣し、二人がかりで受けて返す。
大叔母様はチラとウォンローを見て片眉を跳ね上げて見せる(ほらね言葉で負けると次は力づく)
銀狐は眼尻をつりあげて吠える。「ギャウウウウッッグウウウギャンッギャウウウ」
大剣をぶんぶか振り回してかかってくる。
ギィンギャッガガガッキインキンッカッガシッ
王族3人は応戦しつつ、これはまずいと目を見合わせる。
3対1と数だけ見ればむしろ有利だが、石だのヤカンを投げつけるようなのじゃなく、武道スキルが高い容赦もない攻撃。
そして人間チームの方はやはり保護動物を傷つけるわけにいかないので防戦一方。しかもケン王子はあいかわらず又三郎君の手を握りしめている。
そして、そのうえ、戦いを始めてから恐ろしいことがわかった。
この銀狐は飛んだり走ったり剣を振り回しながらも、一瞬も休みなく喋りっぱなしで、責めたり愚痴ったりバカにしたり勝手な憶測をしたり自分を正当化したり、と言葉の攻撃も同時進行でガンガンやり続ける事ができるのだった。
「うわあああああああ」「消耗するううううう」「この狐っ強いっ強すぎる。イヤな意味で」
シュッ ガッ キイン ジャキイン ブンッ ザシャア ブンッブンッガシャッ
グイグイ攻められ押されまくり、あわや頭上に振り下ろされた黒い大剣に真っ二つ!か、というところで
「王子様ああああっお助けしますううううう神域の中のことゆええええ 以下略うううう」
ガシャッギイいいインンンンンンンンンンッ
王子達と銀狐の間に割って入り、小さな丸い盾で大剣を弾き飛ばしてくれたのは巫女メイメイ。
小さなと言ってもそれは零波と呼ばれるエネルギーを纏わせ、デッケー円盤状になっている。纏った光が散ると… … 鍋のフタだった。
「苺ジャムが!茹でたうどんが!桃が、味噌がネギが蜂蜜が、大根がミカンが、たいへんたいへんんんんん」
わたわたあわてて飛んで帰ってゆく少女。
「ありが…」「メイメイどの…」
またお礼を言う間もなかった。
しかしその材料でいったい何を作ってるんだろう。



後編 に続く

*****************************************


わーいわーい ここまで読んでくださってありがとうございます。
お願いなのですが読んだ印に、Xのリプに絵文字の本を入れといてほしいです。もしくは読んだよ〜って言葉、感想でももちろんありがたいです。

いいね、だけだと絵だけ見たかお話も読んだかわからないんですね。
読みたい方が、だいたい前半を読んでくれたようだな~ってとこで後半に入れ替えしたいので、読み終わった人がどのくらいいるか様子を見たいんですね。できるだけ~よろしくお願いします。ペコペコ。





日付データ

プロフ更新日2025/01/15 03:01 プロフ作成日2016/07/04 01:31
API更新日2025/01/28 02:02 API更新予定2025/01/28 03:02