こんにちは。マインドフルネスたんと申します。学術たん(半bot)としてマインドフルネスやセルフ・コンパッションとそれらに関わる心理療法についてつぶやいています。
心の問題で悩まれている方、心配や後悔などに疲れてしまっている方、忙しい日常の中で余裕を感じたいと思っている方、マインドフルネスについて知りたいと思っている方などに、Twitterを通して情報を共有することを目的に活動しています。
●ツイフィールの目次
(1)私について
(2)コンセプト
(3)注意事項
(4)マインドフルネスの基礎の基礎
(5)参考文献
(1)私について
私はマインドフルネスの勉強と実践を行っていますが、専門家ではありません。マインドフルネスを始めたころはやり方も概念もよく分からず大した効果も感じられず、何となく思い出したらやっていたという感じでした。しかし、ニュースや本で科学によって実証されていることや、心理療法で実際に効果が得られているという事実を知るうちに自分のやり方は何か間違っているかもしれないと思うようになり、専門書や論文を読みながら本気で勉強してみることにしました。すると今までに誤解していたことがたくさん分かってきて、実践も改めながら継続しているうちにだんだんと変化を実感するようになりました。そして、そのように調べたり試行錯誤をする中で分かったことをTwitterで共有したら誰かの役に立つのではないかと思い、学術たんの活動を始めました。セルフ・コンパッションや心理療法についても同じ理由です。
(2)コンセプト
①マインドフルネスの単なるやり方だけでなく、そうすることの意味、どんな効果が得られるのか、より概念的なこと、誤解されやすい点、研究の情報などについてもつぶやきます。
②マインドフルネスは年齢,性別,文化,宗教,精神的な問題の有無に依らず、だれでも取り組めるものであることを前提に、私のツイートでは主に臨床心理学や神経科学の観点からつぶやきます。
③私のつぶやく内容では、専門書や論文からも引用しながらできる限り正確な情報を心がけています。そのため、感想や意見のツイートよりも知識的な内容のツイートがメインになります。
(3)注意事項(2018/10/6以降に適用)
①私は主に臨床心理学や神経科学の立場でマインドフルネス等のツイートをしていますが、勉強中の身であり専門家ではありません。そのため、知識に偏りがあったり、勉強を進めていく中で万が一既存のツイートが不適切と感じたりすることがあった場合は修正を加えることがあります。しかし、できる限り正確な情報をお伝えできるよう、専門書や論文から引用(出典も掲載)したり、自分自身の実践を通して実感が得られたことの中から、専門書や論文の内容から大きく逸脱しないものを選びながらツイートするように心がけています。また、個人的な感想を含む知識的な内容のツイートで正確性が定かでないものは、ツイートの最後に「私見」と書くことにします。
②①に書いた通りツイートには細心の注意を払っていますが、必要を感じた場合は専門家に相談すること、私のツイートだけを情報源に勉強することはせず他の文献等も参照することをお願いします。参考文献は、私が勉強で使用しているものを下に何冊かピックアップしておきますので、よろしければご覧ください。また、もし私のツイートが適切でないと感じられた場合は、その理由も添えてリプライをいただけると助かります。既存のツイートの改善と今後のツイートの参考にさせていただきます。
③私のツイートにはbot機能(自動的にツイートする機能)によってランダムに繰り返されるツイートと不定期の手動によるツイートがあります。bot機能によるツイートは現在2時間置きになっていますが、今後変更するかもしれません。また、botによって繰り返されるツイートの文に追加や変更を加えることがあります。
④私のツイート分野に関わる情報を効率的に見つけてリツイートするために基本的に専門家の方々をフォローさせていただいております。そのため、必ずしも相互フォローにならないことをご了承ください。しかし、100%とは言えませんが、可能な限りリプライにはお返事させていただきたいと思っております。
⑤私自身がいいなと思ったり、勉強になると思ったツイートは「いいね」や「リツイート」もさせていただきますが、それらの内容にこのツイフィールの注意事項は適用されませんし、私の方で責任を持つことはできません。
⑥マインドフルネスは様々な心理療法に応用されていますが万能ではありません。効果に個人差もありますし、うつなどの症状がひどくマインドフルネスをしていて疲れてしまう場合は、できるだけ状態が良いときに実践したり、専門医と相談したりしながら実践するようにしてください。
⑦マインドフルネスではネガティブな思考・感情・身体感覚もありのままに受け入れ見守るアクセプタンスという精神的な態度をとるようにします。これは、思考・感情・身体感覚を無理に制御(体験の回避と呼ばれます)しようとすると逆に状態が悪化することが知られているからです。慣れてくるとネガティブな思考・感情・身体感覚と共存しながらも不快を感じにくくなりますが、慣れないうちは無理をしないようにしてください。
⑧私のツイートによって何らかの問題が生じても私は一切の責任をとることができません。前述のようにできる限り正確な情報を心がけていますが、決して完全ではありません。マインドフルネスやセルフ・コンパッションを通して自身の心身と向き合うことは大きな助けになりますが、リスクがゼロというわけではありません。私が把握できていないことや、今後の臨床研究で明らかになってくることもあると思いますので、実践の際は絶対に無理をせず、必要があれば専門書や専門医の助言も参考にして、ご自身でしっかりと判断したうえで取り組んでください。
⑨このツイフィールの内容は不定期に更新する場合があります。その際はTwitter上で報告をします。更新後は、更新した内容に従って活動しますので予めご了承ください。
(4)マインドフルネスの基礎の基礎
私のツイートにはあまり基礎的ではない内容もありますので、ここではマインドフルネスの基礎の基礎を簡単にまとめておきたいと思います。より詳しく知りたい方は下記の参考文献をあたってみてください。
①マインドフルネスの定義
『意図的に、今この瞬間の体験に、評価や判断を加えることなく注意を向けること』(by J. Kabat-Zinn)
このように、マインドフルネスとは特定の方法で注意を払うことを意味します。よくマインドフルネスはリラックスしている状態と思われがちですが、実際には注意力が高まっている状態と言えます。では、“注意力が高まっている状態”とはどんな状態を指すのかというと、ぼ〜っとしながら何かを考えたり思い出したりして心ここに在らずになっている状態から抜け出し、ハッと我にかえったときの感覚を維持している状態です。つまり、リラックスして眠たくなるような状態というよりも、注意深く目覚めている状態ということになります。
では、以上のことを念頭においてもう一度定義の内容を確認してみましょう。
“今この瞬間”とは、心ここに在らずの状態からハッと気づいて戻ってくるところを指しています。では、そこでの“体験”とはどんなものでしょうか?まず分かりやすいのは「五感で捉えるもの」ですが、それだけではありません。脳は正常な活動の中でも自動的に思考や感情を生み出していますので、注意深い状態を維持していても自然に思考や感情が出てきます。“今この瞬間の体験”にはこの「自動的な思考・感情」も含まれます。
ぼ〜としている状態では、今この瞬間の体験(=「五感で捉えたものや自動的な思考・感情」)からさらにあれこれと連想を膨らましているのですが、そのような連想を加えないということを“評価や判断を加えることなく”と言っているわけです。評価や判断の具体例として分かりやすいものは「好きor嫌い」とか「良いor悪い」とかが挙げられます。
最後に“意図的に”と言うのは、今この瞬間の体験を、受身的に感じるのではなく、“能動的に、関心を向けて”観察することを意味しています。
②「アクセプタンス」と「気づき」の意味
マインドフルネスではこの二つの言葉がよく出てきます。これらの意味は以下の通りです。
・アクセプタンス(acceptance)
今この瞬間の体験を、(快か不快かによらず)評価や判断を加えることなくありのままに意識の中に迎え入れ、それらを排除したり留めたりしようとせず、変化させたりコントロールしようとしたりもせず、そのままの状態を見守ろうとする受容的な態度のこと。
・気づき(awareness)
ハッと我にかえったときの感覚のことで、評価や判断といった解釈が加わる前に生じる感覚と言えます。普段使われるような、忘れ物に気づいているというような「認識している」という意味ではなく「注意力が高まっている」というような意味になります。
「アクセプタンス」と「気づき」を用いて、マインドフルネスは次のように定義されることもあります。
マインドフルネスとは、『アクセプタンスを伴う、現在の体験への気づき』である。(by Germer, Siegel, & Fulton)
③「Focused Attention (FA)」と「Open Monitoring (OM)」
この二つも重要な概念なのでここで触れておきます。
・Focused Attention
呼吸など一つの対象に注意を集中すること。
・Open Monitoring
今の瞬間のあらゆる体験を同時に、ありのままに観察する注意の払い方
マインドフルネスの実践にはFAとOMの両方が含まれ、まずFAをしばらく続け、安定してきたらあらゆる体験に注意を広げOMに移行します。マインドフルネスのメインはOMですが、FAが安定している状態でよりOMも安定することが知られているため、実践の際はFA→OMを1セットにすることが推奨されています。
④「脱中心化」とうつ病の再発防止効果
・脱中心化
マインドフルネスにおいて脱中心化とは次のような性質を併せ持つ状態にシフトすることです。
⒈ 思考・感情・身体感覚を客観視できるメタ的な視点に立つ。
⒉ 思考と現実を区別し、思考は単に心の中を通過していく出来事として認識している。
⒊ アクセプタンスを伴う
うつ病の経験者はネガティブな感情と思考が強く結びついているため、小さな気分の落ち込みからもネガティブな思考が生じ、そこからさらにネガティブな連想を重ねていくことでうつの再発が促されやすくなります。ネガティブな感情と思考の連動は自動的に生じるため、うつ病の再発防止に重要なことは、「ネガティブな思考が生じたとき、その思考を現実と区別出来ること、その思考を消したり変えたりしようとして思考に飲み込まれないこと」であると考えられています。そのような理由から脱中心化はうつ病の再発防止効果をもつことになります。
アクセプタンスを伴い瞬間瞬間の体験をありのままに観察するマインドフルネスは、脱中心化を促すのに非常に有効であると考えられ、認知療法とマインドフルネスが統合されたものを「マインドフルネス認知療法(Mindfulness-Based Cognitive Therapy, MBCT)」と言います。
⑤マインドフルネスのその他の効果の例
・うつ病活動期の症状の改善
・全般性不安障害に対する不安症状の低減
・脳の注意機能の向上
・免疫システムの強化
・海馬の灰白質密度の増加
・日常生活における満足度の向上
・慢性疼痛に対する不快感の低下
など。
以上の内容は下記の参考文献と論文を参考にしています。
(5)参考文献
[1]ジョン・カバットジン(著) (2007) 『マインドフルネスストレス低減法』春木 豊 (翻訳) 北大路書房.
[2]ジョン・カバットジン (著) (2012) 『マインドフルネスを始めたいあなたへ 毎日の生活でできる瞑想:Wherever You Go, There You Are』 田中 麻里 (監修, 翻訳), 松丸 さとみ (翻訳) 星和書店.
[3]熊野宏昭 (著) (2016) 『実践! マインドフルネス―今この瞬間に気づき青空を感じるレッスン[注意訓練CD付]』 サンガ.
[4]マーク・ウィリアムズ, ジョン・ティーズデール, ジンデル・シーガル, ジョン・カバットジン (著) (2012) 『うつのためのマインドフルネス実践 慢性的な不幸感からの解放』 越川 房子, 黒澤 麻美 (翻訳) 星和書店.
[5]Susan L. Smalley, Diana Winston (著) (2016) 『マインドフルネスのすべて-「今この瞬間」への気づき』 本間 生夫, 下山 晴彦 (監訳), 中野 美奈, 政岡 ゆり (翻訳) 丸善出版.
[6]ジンデル・シーガル, マーク・ウィリアムズ, ジョン・ティーズデール (著) (2007) 『マインドフルネス認知療法:うつを予防する新しいアプローチ』 越川 房子 (監訳) 北大路書房.
[7]貝谷 久宣, 熊野 宏昭, 越川 房子 (編集) (2016) 『マインドフルネス 基礎と実践』 日本評論社.
[8]ラリー ローゼンバーグ (著) (2001) 『呼吸による癒し―実践ヴィパッサナー瞑想』 井上 ウィマラ (翻訳) 春秋社.
[9]井上 ウィマラ (著) (2005) 『呼吸による気づきの教え―パーリ原典「アーナーパーナサティ・スッタ」詳解』 佼成出版社.
[10]井上 ウィマラ (著) (2003) 『心を開く瞑想レッスン』 大法輪閣.
[11]シャロン サルツバーグ (著) (2011) 『リアルハピネス―28日間瞑想プログラム』 有本 智津 (翻訳) アルファポリス.
[12]クリスティーン・ネフ (著) (2014) 『セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる』 石村 郁夫, 樫村 正美 (翻訳) 金剛出版.
[13]カーク・D・ストローサル, パトリシア・J・ロビンソン (著), スティーブン・C・ヘイズ (序文) (2018) 『うつのためのマインドフルネス&アクセプタンス・ワークブック』 種市 摂子 (翻訳) 星和書店.
[14]ポール・E・フラックスマン, フランク・W・ボンド, フレデリック・リブハイム (著) (2015) 『マインドフルにいきいき働くためのトレーニングマニュアル 職場のためのACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)』 武藤 崇, 土屋 政雄, 三田村 仰 (翻訳) 星和書店.
[15]ジェイソン・B・ルオマ, スティーブン・C・ヘイズ, ロビン・D・ウォルサー (著) (2009) 『ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をまなぶ セラピストのための機能的な臨床スキル・トレーニング・マニュアル』 高橋 史, 熊野 宏昭, 武藤 崇 (監訳) 星和書店.
[16]スティーブン・C・ヘイズ, カーク・D・ストローサル, ケリー・G・ウィルソン (著) (2014) 『アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT) 第2版 -マインドフルネスな変化のためのプロセスと実践‐』 武藤 崇, 三田村 仰, 大月 友 (翻訳) 星和書店.
[17]ニコラス・トールネケ (著) (2013) 『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門』 山本 淳一 (監修), 武藤 崇, 熊野 宏昭 (翻訳) 星和書店.
[18]エイドリアン・ウェルズ (著) (2012) 『メタ認知療法: うつと不安の新しいケースフォーミュレーション』 熊野宏昭, 今井正司, 境 泉洋 (監訳) 日本評論社.
[19]熊野宏昭 (著) (2012) 『新世代の認知行動療法』 日本評論社.
【今までのツイートに引用した論文】
[1] Baer, R.A. (2003). Mindfulness training as a clinical intervention: A conceptual and empirical review. Clinical Psychology: Science and Practice, 10, 125–143.
[2] Bajaj, B., & Pande, N. (2016). Mediating role of resilience in the impact of mindfulness on life satisfaction and affect as indices of subjective well-being. Personality and Individual Differences, 93, 63–67.
[3] Bishop, S. R., Lau, M., Shapiro, S., Carlson, L., Anderson, N. C., Carmody, J., et al. (2004). Mindfulness: A proposed operational definition. Clinical Psychololgy: Science and Practice, 11, 230-241.
[4] Brown, K. W., & Ryan, R. M. (2004). Perils and promise in defining and measuring mindfulness: Observations from experience. Clinical Psychology: Science and Practice, 11, 242-248.
[5] de Bruin, E. I., Topper, M., Muskens, J. G., Bögels, S. M., & Kamphuis, J. H. (2012). Psychometric properties of the Five Facets Mindfulness Questionnaire (FFMQ) in a meditating and a non-meditating sample. Assessment, 19, 187–197.
[6] Greenberg, J., Romero, V.L., Elkin-Frankston, S., Bezdek, M.A., Schumacher, E.H., Lazar, S.W., (2018). Reduced interference in working memory following mindfulness training is associated with increases in hippocampal volume. Brain imaging and behavior,
https://doi.org/10.1007/s11682-018-9858-4
[7] Lindsay, E.K., Creswell, J.D. (2017). Mechanisms of mindfulness training: monitor and acceptance theory (MAT). Clin. Psychol. Rev. 51, 48–59.
[8] Lindsay, E.K., Young, S., Smyth, J.M., Brown, K.W., Creswell, J.D., (2018). Acceptance lowers stress reactivity: dismantling mindfulness training in a randomized controlled trial. Psychoneuroendocrinology 87, 63–73.
[9] Neff, K. D. (2003b). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2(2), 85–101.
[10] Rahl, H. A., Lindsay, E. K., Pacilio, L. E., Brown, K. W., & Creswell, J. D. (2017). Brief mindfulness meditation training reduces mind wandering: The critical role of acceptance. Emotion, 17(2), 224-230.
[11] Tirch, D. D. (2010). Mindfulness as a context for the cultivation of compassion. International Journal of Cognitive Therapy, 3, 113–123.
[12] Weng HY, Lapate RC, Stodola DE, Rogers GM and Davidson RJ (2018) Visual Attention to Suffering After Compassion Training Is Associated With Decreased Amygdala Responses. Front. Psychol. 9:771. doi: 10.3389/fpsyg.2018.00771
[13] マインドフルネスはなぜ効果をもつのか(押さえておきたい!心身医学の臨床の知45)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/52/11/52_KJ00008274856/_article/-char/ja
[14] 洞察瞑想時に自伝的記憶関連脳領域間の結合性が低下することを発見 -今この瞬間に生じている経験にありのままに気づくことの神経基盤-
https://research-er.jp/articles/view/72234
[15] “幸福感”は年収の高さに依存するのか? ~心理的傾向「マインドフルネス」の影響を初めて解明~
https://research-er.jp/articles/view/73142