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【プロローグ】
土地神
吾輩は土地神である。
名前は━━、カエルという。
長らく眠っているうちに人の世には疎くなってしまったが、依代としたこの肉体はカエルと呼ばれているらしい。
そもそも、あの雲竜の悪餓鬼に起こされていなければ、このように身を窶す事もなかったのだが話せば長くなるので今は辞めておこう。
あれから何度代替わりをしたか忘れてしまったが、今もこの雲竜家に身を寄せている。
現当主は吾輩を崇め、信仰を広めんとする殊勝な男だ。それに比べてその息子、『え〜じ』は信仰心というものが全くない。とはいえ、酒に酔い井戸に落ちてしまった吾輩を救った恩があるので、仕方なく世話をしてやっている。幼少より目に掛けたおかげか懐くのは良いが、土地神である吾輩を『ケロ吉』などと呼び、家を抜け出しては街に吾輩を連れ出す自由奔放な男だ。
それはそうと、久しく見ぬうちに人の世は大きく様変わりし興味が尽きぬ。
先程からも「ケロ吉さ〜ん」と吾輩を呼ぶ声がする。次は何処へ連れて行くつもりだろうか。
どれ、仕方がないので行ってやるか。
吾輩は土地神である。
名前は「ケロ吉」と言う。
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雲竜え〜じ
小さい時から何度も聞かされた土地神の話。
遠い昔、ご先祖様が神様の住む社を壊してしまったらしく、帰る場所のなくなった神様を雲竜家に迎え入れ、代々お仕えしているんだとか。子供ながらに胡散臭い話だと思いながら父さんの話を聞いていた気がする。
ある夜、庭の井戸からバシャバシャと水の音が聞こえたから見てみると、蛙が溺れている。蛙って溺れるのか?と考える間もなく体が動いていた。
それ以来、僕に懐いたのか気がつくとそばにこいつが居た。ホントは犬を飼いたかったけど「ケロ吉」と名付けて可愛がることにした。
ある日、父にケロ吉が見つかった。庭に返してこいと言われるかと身構えた瞬間、今まで聞いたことがないような声で「と、土地神様!」と平伏した。早くもボケてしまったのかと思った。
まあ、それからは父も熱心にケロ吉の世話をしてくれるし、僕が出かける時はひょこりと肩に乗ってきて、僕たちはいつも一緒だった。
さぁ次は何を一緒にしようか。なんでも最近はYouTubeというのが流行っているらしい。
ケロ吉さんはどこに行ったかな